「暮らしとはたらく、そのあいだ」kitchen neco

ケーキをつくっていると、 お客さんの顔が浮かぶんです。

暮らすことと、働くこと。きれいに分けられない日常の中で、迷いや葛藤を抱えながらも家族を想い、日々の選択を重ねていく。
おやつと地場野菜ごはんのお店「kitchen neco」を営む、槻山さんご夫婦の飾らない等身大の働きかたをお届けします。

暮らしながら働くという選択

ーー お二人はもともとは、都内のホテルやレストランで一緒に働かれていたんですよね。

幸恵さん そうですね。子どもを育てながら一緒に仕事ができる環境をつくりたくて、店舗兼住宅を前提に土地探しをはじめました。

ーー 最初から東村山を考えていたわけではなかった?

幸恵さん 全然です(笑)。正直、最初は「すごい田舎なのかな。畑しかないのかな」と思っていました。

裕輔さん でも実際に来てみたら、全然そんなことなくて。

幸恵さん 地場野菜の直売所がいっぱいあるのが魅力でした。私たち、もともとそういう野菜が好きだったんですよね。

裕輔さん レストラン時代から、こだわりの野菜を取り寄せたりしていたので、この環境はすごくよかったです。

日常と仕事の境目

ーー ご自宅でお店を営んでいると、暮らしと仕事の境目ってありますか?

幸恵さん ないですね(笑)。でも、いい意味で子どもがいることで時間が区切られます。朝は幼稚園のバスに送り出して、そのまま仕事。
私は夜の仕込み担当なので、子どもを寝かしつけてからまた仕込みをしています。

裕輔さん 僕は朝4時に起きて、家族が起きてくるまでパンや焼き菓子を焼いています。

ーー かなり仕事中心の生活ですね。

幸恵さん 子どもがいなかったら、多分二人でずっと仕事してると思います。

裕輔さん でも苦じゃないんですよ。ずっとやってきたことなので、自然な感じですね。

ーー 同じ屋根の下でずーっと一緒にいると、ケンカになったりしませんか?

幸恵さん あんまりしないですね。「これ以上いくとケンカになるな」ってところで、一回黙ります(笑)。

裕輔さん 彼女が一歩引いてくれるので。

ーー 大事ですね(笑)。一緒にいてよかったなと思う瞬間は?

裕輔さん 一番信頼できる人が近くにいることですね。何があっても信頼できる存在がいるのは心強いです。

休むことへの葛藤と日々のリアル

ーー 今はテイクアウト専門ですが、最初からこのかたちを目指していたわけではなかったんですよね。

幸恵さん 私はレストランでアシェットデセール(皿盛りのデザート)をつくっていたので、テイクアウト用のケーキづくりには少し抵抗がありました。

裕輔さん でも子どもが生まれるタイミングとコロナ禍が重なって、「テイクアウト一本でいこうか」と。

ーー お子さんが体調を崩したときなどは大変そうです。

幸恵さん そうですね。臨時休業が続くと、お客さんにも申し訳ないし、地域でやっている以上、信用もあると思うんです。

ーー 仕込みをはじめてから休むわけにもいかないですしね。

幸恵さん そうなんです。仕込みはじめる前に「今日は休もう」と判断しないと、食材が全部無駄になってしまうので。

お客さんの顔が浮かぶ仕込み時間

ーー 毎朝の仕込みの原動力は何ですか?

幸恵さん やっぱりお客さんですね。季節ごとに「あのお客さん、このケーキ好きだったよね」って自然と思い浮かぶんです。

 裕輔さん 商品とお客さんの顔が紐づいてるんですよね。

幸恵さん Instagramを遡って、「去年この時期これつくってた!」って思い出したり。お客さんからリクエストをいただくこともあります。

ーー 東村山のお客さんにはどんな印象がありますか?

裕輔さん やさしいですね。「こんなに買っちゃって大丈夫ですか?」って後ろの人を気遣ってくれたり、こちらの状況を分かってくれている感じがあるんです。

幸恵さん 本当に。

裕輔さん 「これ買っちゃって大丈夫ですか?」って後ろの人を気遣ってくれたり、状況を分かってくれている感じがあるんです。

幸恵さん ちょっとした会話があるのも楽しいです。

未来より「いま」、働くこととは

ーー 地域密着のお店という印象がありますが、ご自身ではあまりそういう発信をしていませんよね。

幸恵さん そうですね。自然にそこにいるのがいいかなって。

ーー あえて「地域密着!」と打ち出さなくても。

幸恵さん そういう気持ちはありますけど、前面に出さなくてもいいのかなって思います。

ーー お二人が一番大切にしていることは何ですか?

裕輔さん 子どもが笑顔でいられる時間をつくれれば、それで十分かなと思っています。そのための仕事ですね。

幸恵さん 子どもが今みたいに「ママ、ママ」って寄ってきてくれる時間って、本当にあっという間だと思うんです。だから、その時間を大切にしたいですね。

ーー これからやってみたいことはありますか?

裕輔さん 子どもの成長に合わせてですね。イベントに出たり、通販をやってみたり。

幸恵さん その時々の暮らしに合わせて、少しずつできることを増やしていけたらいいなと思っています。

ーー 未来を決め切るというより、今の暮らしに合わせながら?

幸恵さん そうですね。「なるようになる」っていうタイプなので(笑)。

裕輔さん お客さんが来てくれるから、今のかたちができている。本当にありがたいなと思っています。

誰かを想うことから一日が始まる

「あのお客さん、そろそろこのケーキを楽しみにしているかな」

朝早くからの仕込み時間、お二人の頭に浮かぶのは、いつも誰かの顔です。

家族との時間を大切にしながら、無理をせず、その時々の暮らしに合わせて働く。その積み重ねが、お店の空気にも、お菓子やごはんにも、少しずつ表れているように感じました。

誰かを想いながら一日を重ねる。その当たり前の営みが、「kitchen neco」らしさなのかもしれません。

撮影|田島ふみえ(街の写真館 東村山)

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